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5月31日(土)雨
 台風の影響で明け方から雨。午前4時頃ブーの様子を見に一階に降りるとどこにもブーの姿はなかった。2階寝室のカーテンの隙間からホシが顔を出している。まさかと思いながらカーテンをあけると、ホシと向かい合わせでブーが窓辺に座っていた。自力でここまで来たらしい。その後、ブーは自力で1階に降りると猫のトイレでおしっこをした。ソファーのところまでくるといきなり吐いた。出てきたのは大量の胃液。さっき飲んだばかりの薬と水も一気に吐き出した。そして風呂場に移動して寝転んでしまった。お昼前にはごはんを少し食べ、水を飲んで、人間のトイレに閉じこもってしまった。
 お昼に酸素業者の人がブーのために注文した酸素ボンベを持ってきた。玄関のチャイムを鳴らすとブーが驚くと思って、午前中から表で車の音がするといちいち玄関に走りドアを開けに行ってたので、午後1時半に到着した時は本当にうれしかった。その酸素業者は昨日行った獣医からの紹介だったけど電話番号を教えてもらっただけで、使い方は工藤ちゃんに相談してアドバイスを受けていた。1500mlで0.5ミリの酸素供給量で2日もつボンベのセット5500円。昨日の獣医は、たった2時間か3時間の酸素吸入で5000円だったけど、酸素って意外と安いのだ。酸素業者の電話受付の女性もとても親切で、いろいろ教えてくれた。その女性は多摩区に住んでいるとかで、ご近所のよしみか親身になってくれた。工藤ちゃんは、息が苦しいときなどに15分ぐらい時間を決めて吸入する方法を薦めてくれた。集中的に酸素吸入するときは、ペットボトルを切ってホースをつなぐ酸素マスクを作りなさいと指示した。しかも、CCレモンのペットボトルが一番いいんだとちょっぴり得意げに話した。
 酸素が届いたので酸素テントを作るために、ケージを覆うビニールを買ってきた。ケージをビニールで覆っていると、ホシやハチが興味津々でのぞいていた。すると、水を飲んでいたブーもとことこ歩いてきて、一緒に見ていた。そしてケージを使った酸素テントが完成!酸素テントを試す前に、まずブーの鼻の前に酸素のチューブを置いてみた。これでもし少しでも調子が良くなればいいなと思ってじっと見ていると、突然肩と胸が痙攣しはじめた。心臓の鼓動が聞こえそうなぐらい激しく動くので怖くなってしまった。痙攣はすぐに止まったが、また何度か始まったりしてどうしていいかわからなかった。でも、ブーはあわてるでも苦しむでも怖がる事もなく、状況をおとなしく素直に受け入れている。動物って強いと思った。そのうち、ブーが風呂場のドアの方を見ようと身を起こす時に痙攣が起こる事がわかった。酸素を吸う前は平気だったので、試しに酸素を外してみると・・・痙攣は治まった!一瞬ブーはもうダメだーと絶望感でいっぱいだったけど、落ち着いて考えてみれば、急に酸素をたくさん吸わせたとたん痙攣が始まったので、酸素のせいに決まってる。酸素だらけもよくないんだと初めて知った。その後、ブーはのっそりと起き上がり、とことこ風呂場に歩いていってそこで横になっていた。腰や背中をマッサージするとゴロゴロいって眺めていると眠ってしまった。時々伸びをしたり、体の向きを変えたり、レム睡眠のように手足や顔がピクピクしたりした。様子は落ち着いたので一安心。胸の痙攣は寝ている時も一瞬起こったりした。エサや水分を取り続けていても、先に心臓が参ってしまうかもしれない。啓太君と長くなさそうだねと話し合った。
 夕方、二階にいると1階にいた啓太君が低めの声で呼ぶので、ブーが急変したんだと思って体が一瞬固まってしまった。2階に上がってきた啓太君が「ホシがレム睡眠でしっぽがフサフサになってるよ」と言ったので、一気に力が抜けた。もうビックリしてこっちの方がフサフサになりそうだった。1階で寝ているホシを見ると本当にシッポがフサフサ!なんか相当恐ろしい夢でも見ているらしい。笑って見ていると、ホシは目を覚ました。まだ夢から覚めてないのかすごい不敵な表情でボーっとしてる。ホシは1日1つは必ずドジを踏む。
 最初に工藤ちゃんからもらった利尿剤が今日で最後だったので啓太君が電話するともう飲まなくていいので追加は出さないと言われた。毎日たくさん薬を飲むのをブーは嫌がっているので、薬が減ってよかった。啓太君は朝と夜の一日2回、ブーに薬を飲ませている。なかなか飲まないとき、指をかまれて血がでちゃった事もある。今日もブーは何度も薬を吐き出して、病人とは思えない力で抵抗していた。薬を飲んだ直後は啓太君の事を怖がったり、ゴロゴロも止まってしまう。すぐに背中やお尻をマッサージしてあげれば落ち着いてまた元通りのブーに戻るんだけど、啓太君は薬を飲ませたあと毎回「悪かったよ」とブーに謝っている。
 夜、ブーに水にふやかしたドライフードを食べさせたら嫌がって、ソファのあたりに逃げてぱったりと倒れていた。今度は酸素をあげていないのに、何度か肩や足、首が少し痙攣していた。ブーは痙攣中でもゴロゴロいうし、特に苦しんだりしないので、見ている方もだんだん慣れてきた。

 今日、猫について書かれた本を読んでいると、著者が自分の猫を安楽死させた事を後悔しているという事が書かれていた。ブーは安楽死なんて事は知らないし、望まないだろうな。ただ今までどおりにこの家にみんなといたいと思っているのは間違いない。だから、ブーがここにいられる限りいてもらおう。もう限界で天国へ行くというなら引き止めない。薬とか酸素とかたいして力になってあげられないけど、できるだけ苦しまないで済むような努力だけするつもり。
 寝る前に風呂場を覗くとブーが起きていた。頭をなでるとゴロゴロいった。背骨が浮き出てこんなに弱っても、こうやって喜んでくれるなんて本当にブーはいい猫だ。

5月30日(金)晴れ 
 腫瘍科がある獣医にブーを連れて行く日が来た。ブーは、今朝も昨日と同じ様子だったけどキャリーバックに入れられると少し鳴いた。病院へは電車で行った。痩せたとはいえ、依然重たいブーを啓太君がバックごと肩からかけて運んだ。ブーは電車では鳴かなかったけど、ブルブル震えてしまって少しかわいそうだった。

 駅からわりと近くにその病院があった。有名な動物病院だから都会のシステマチックなところかなぁなんて想像していた。でも、ブーの病気の事が少しでもわかって、画期的な方法で助かる治療法がもしあったらラッキー、なくても今の苦しみを少しでも和らげるお薬を出してもらえたらいいなぁと考え、多少の事も気にしないつもりだった。ただ、ブーは怖がりなので入院だけは避けようと決めていた。
 病院に到着した。受付を済ませ、しばらく待っていた。病院内は明るくインテリアも素敵で働いている人もおそろいの制服をきていた。混雑を予想していたが、予約制になっているからか、待合室に客は2〜3組しかいなかった。
 診察室に入るとすぐブーは酸素吸入をするために奥に連れていかれてしまった。奥は全然見えなくてちょっと不安になった。問診に一生懸命答えると最後に担当の人は「私は看護士ですので、あとで先生と話してください」と言った。
 また更に待って、やっと先生に会うことができた。若い女性の獣医は、ブーのレントゲン写真を出して、胸に腫瘍がある事、腫瘍は抗がん剤で治療ができる事、肝臓が肥大してるという事、原因は猫白血病ウイルスが疑われるが治らない事、さらに腎臓に結石があるという事などを矢継ぎ早に話した。そして、今日のところは検査をするが、その前にまず見積もりの説明をするのでまた待つようにと指示した。本やインターネットで調べていたから猫白血病ウイルスが原因という予想はついてたけど、それなりにショック。しかも、同居の猫にもうつっているという。とにかくブーの検査をしてくれるというので、今後の事は検査結果次第だなぁと漠然と考えながら待っていた。また、見積もりと言うぐらいだから抗がん剤投与になった時など今後の治療予定を想定したものだろうし、やっと話が一歩進んでホッとした気分だった。

 待っている間、まわりを観察していた。ぼちぼち客も増えてきている。元気そうな犬を連れたおばさんはやっぱりリードを放してしまっていた。ペットを連れていなくても客はペットの名前で呼ばれるのはなんとも言えない。となりのベンチに座っていた30代半ばの男性は「チャーちゃ〜ん」と呼ばれて診察室に入っていった。雑種と思われる子猫を連れてきたその男性も何かショックな事があったらしく、診察室を出るときは涙ぐんでいたので、同情してしまった。
 次はわりと早く呼ばれ、看護士の女性に1枚の紙を提示された。たくさん並んだ検査項目と数字。今日1日の検査入院代は8万6千円だった。見積もりというのは、単に今日一日の料金の見積もりだったのだ。覚悟はしてたけど、ここまで高額とは思いもよらず正直とまどってしまった。再び獣医さんを呼んでもらい、いろいろ質問した。先生はブーが猫白血病ウイルスと仮定して、その治療に使う抗がん剤治療は吐き気や下痢を伴い苦痛である事と長くても半年ぐらいしか生きられない、その他の治療法はない、楽にする方法も安楽死ぐらいしかないと話してくれた。そこまできいて腹は決まった。ブーが死んじゃうのは覚悟できてるから、少しでも苦しませないようにしたい、抗がん剤治療は受けたくないと伝えた。・・・よく調べないで最新医療に頼ろうとしてかえってブーに苦しい思いをさせるところだった自分への苛立ちと、ブーを失ってしまう事がさらに確実になってしまった悲しみでついに涙がポロポロこぼれてしまった・・・。
 結局、猫白血病ウイルスの検査だけして帰る事になった。結果はやっぱり陽性。ブーは猫白血病ウイルスに冒されたのが原因で胸のリンパ腺に腫瘍ができてしまったのだ。
 結局、支払いは、受診料とレントゲン代など計2万2千円で済んだ。
 病院に着いてから2〜3時間後、やっとブーと再会。ブーはとても落ち着いて見えた。この数時間、誰にどんな事されてどんな気分だったのか聞いてみたいけど相手は動物。すくなくとも心細くて怖かったのは間違いない。助ける方法なんてないのにこんな所まで連れて来て、ブーには本当に申し訳ない気分でいっぱいだった。ブーは怒る訳でもなく撫でようとのばした手の臭いをかいで、丸い目でただこっちを見つめているだけ。ごめんね、ブー。人間は身勝手だね。
 家に着くと、ブーは横たわっていたけどゴロゴロいってくれた。どんな時でもブーは出かけたあと家に戻るといつも喜んでいる。やっぱり家が好きなんだ。今日は、水もよく飲むし、エサもふやかしたドライフードを数個食べた。
 夕方、工藤ちゃんに電話してハチとホシを白血病ウイルス検査に連れて行った。工藤ちゃん的には、たぶん2匹とも感染してるし、してなくてもワクチンは意味がないと消極的だった。とにかく約束の17時半に行った。工藤ちゃんに、今日他の病院に行った事を報告した。普通なら怒って当然なのに工藤ちゃんは違う病院に行くのは必要な事だと言った。今日行った病院の事は工藤ちゃんもよく知っているらしく、いろいろその病院について教えてくれた
 猫白血病ウイルスの検査は、前足から採血をして調べる。最初にハチが採血された。ホシは、もがいたけどみんなに押さえつけれて血をとられた。検査は、結果が数分ででるという人間の妊娠検査薬のような試験紙をつかった。待っている間、もうじたばたしてもホシもハチも感染してるか、うまくいってもどっちかは必ず感染してるに決まってる・・・突然「だるまさんが転んだ」は、関西では「ぼんさんが屁をこいた」って言うんだっけなとか、悲しくならないように変な事ばかりずっと考えていた。
 結果は・・・ハチは陰性!95%の確率で大丈夫!ハチとまだ一緒にいられる〜天にも昇る気分だった。ホシの方は、検査の途中でホシが突然逃げ出してブラインドにつっこみそうになったのを見て工藤ちゃんがあわてたので失敗。もう一度、反対の前足から採血する事になった。でも、嫌がるのでうまく針がささらず、何度もブスブス刺されてしまった。やっぱりホシに関する事は失敗がつきもの。本当にドジでトンマ大王だ。またドキドキしながら試験紙を見つめていると・・・感染してると青いマークが出るところが白いまま。なんとホシも陰性!!興奮して何度も工藤ちゃんにお礼を言ってしまった。さすがの工藤ちゃんも結果が陰性って出ただけで、私は何もしてないですからと笑っていた。なぜブーだけそんな病気にかかってしまったのかは疑問だけど、今日一日ずたずたになっていた気持ちがなんか救われた感じだった。
 いつものキャリーバックにホシとハチを一緒に押し込んで自転車で帰った。ホシは前足から少し流血していて哀れだったけど、家に帰ったら自分でペロペロ舐めて、何事もなかったかのようにたっぷり遊んで、その後眠ってしまいイビキを「ホゲ〜」とかいていた。
 ブーは、2階にはあがらず、1階のトイレや風呂場を移動したり、時々ソファの近くで転がったまんま。夜になって、2階で啓太君が屋根裏の扉をあけていたら、ブーの耳はピーンと立って、目もまんまるになった。ブーは屋根裏が大好きで、いつも屋根裏の扉をあけたときは誰よりも先に階段を駆け上っていた。きっと、今日も行きたいのかなぁと思って、抱っこして2階に連れて行くと、寝室の前でぱったりと倒れたきりだった。たぶんもう二度と屋根裏で遊ぶ事はないだろうな。またそっと1階に抱いておろしてあげた。
 寝る前にお風呂場とトイレに敷物をブーの為にしきつめてあげた。トイレのマットは、今日猫草を食べすぎたハチがゲロを吐いて汚してしまったのでとりかえた。ハチはマットにゲロなんか吐いた事なかったのに。ブーがマットを必要としてる時に限ってそんな事するなんて一体どういうつもりだろう。それでも、ハチがソファの下で寝転んでいると、ブーは側にきてゴロゴロいいながら寝転んだ。前からブーは家中でハチの事が一番大好きで、よくハチに擦り寄りすぎて嫌がられていた。でも今日のハチはブーの頭をやさしく舐めてあげていたので、少し感動。ゲロ事件は許す事にした。今日はとても長い一日だった。

5月29日(木)晴れ
 今日はおじいちゃんの命日。たしか、友人が28歳で亡くなったのも2年前の今頃だったなあと思いながら、どうかブーを助けてくださいと念じてみた。朝起きて、みんなが1階に下りるとブーも降りてきて、コーヒーを飲んでいる啓太君の足元に寝転んでいた。実は、啓太君のモーニングコーヒーにつきあうのはブーの日課だったけど、少し前からやらなくなってたらしい。そうい言えば、朝はブーのゴロゴロとスリスリは結構激しいのに最近なかったような気がする。今思えば、最近ちょっとずつ違ってきてた事がけっこうあったなあと思う。今までやってた事をやらなくなっても、その時は大人になったんだとか、ただ飽きてその行動をとらなくなっただけだと特に気に留める事はあまりない。早く気付いてあげられなくて、本当に悔しい。
 今日もブーは寝てばかり。スポイトで無理やり水を飲ませた。いつもは、凄い勢いで水をたくさん飲むくせに、今日は数滴飲んだら嫌がって逃げようとした。買ってきた柔らかいキャットフードも臭いを嗅いだだけでおえっとなってしまった。大好きなおやつの土佐の焼きカツオとふやかしたドライフードを何粒か食べた。スーパーに行ってブーの好きそうなものを必死で探した。カツオ関係が好きなので、カツオのたたきも買ってきたけどブーはそっぽをむいてしまった。ホシは大喜びで食べた。ブーも元気だったら大喜びでうなり声を上げながら
食べたと思う。
 午後、ペットショップに行った啓太君が帰ってきた。ブーが好きそうなものを探しに行ったらしいんだけど私が買った物を見て「かぶったー」と叫んでいた。やっぱりカツオ関係を買ってきた。猫用のミルクも買ってきて、スポイトで飲ませた。ほんの少し飲んだ。お腹の振幅が少しゆっくりになったような気もする。それは、薬がきいて穏やかになったのか、体が弱ってゆっくりになったのかわからない。

 啓太君は、腫瘍に詳しい獣医を探そうとあちこち電話で必死に問い合わせたり調べたりしてる。ブーの病気は、本やインターネットで調べて、なんとなく猫白血病ウイルスが原因じゃないかと疑い始めた。そしたら、ハチもホシも危ないけど、どうしようもない。抗がん剤を使えば少し長生きできるし、うまく効けば10〜15%はよくなるらしい。明日、別の大きな動物病院に連れて行こうと決めた。
 夕方、自力で1階におりてきたブーは、猫のトイレでおしっこをした。その後、人間のトイレで横になっていた。暗くて涼しくて静かな所にいたいらしい。でも、少しあいたドアの隙間からリビングのみんなの様子をうかがってる。しかも、時々覗くとゴロゴロいった。一人になりたいのか、みんなといたいのかわからない。しばらくして、今度は、キャリーバックの中で寝ていた。あんなに入るのを嫌がっていたのにまた病院に行きたいのかな?本当によくわからない。
 ブーは何も食べようとしないから、無理やり食べさせる事にした。嫌がっても嫌われても容赦しないと心を鬼にして、ふやかしたドライフードをブーの口につっこんだ。すると、突然自分からエサを食べ始めた。つっこまれるくらいなら自分で食べた方がマシと言わんばかり。結局、4〜5粒は食べた。今度は、水。スポイトで口の中に水を流し込むと、嫌がって逃げ出し、いつも使ってる水入れの前で立ち止まった。今日は、5〜6歩歩くと休んでいたからまた休んでいるのかと思ったら、なんと水を自分で飲み始めた。やっぱり水も自分で飲んだ方がマシだと思ったのかどうかはわからないけど、いつものようにゴクゴクとよく飲んだ。それから、啓太君がきれいにしてくれたばかりの猫用トイレに入ったあと、人間のトイレに消えていった。
 寝る時間がきても、ブーは一人でトイレにこもったきり。側にいないと異変に気づいてやれないから、抱き上げて2階に連れて行く事にした。ブーは抱かれるのがあまり好きではなかったのに、抱かれて二階に行くまでずっと喉をゴロゴロ鳴らし続けた。しばらく布団の上で寝転んでいたけどまた一人で階段を下りてトイレにこもってしまった。

5月28日(水)晴れ
 朝起きてすぐ、工藤ちゃんに電話してブーを病院に連れていった。ブーはキャリーバックに入るのも、病院でバックから出るのも嫌がった。すごく怯えて、病院の診察台の角を爪を立てた手でぎゅっと握っていた。もう一度、レントゲンを撮った。この前の診察では、わきの下の方はよく見なかったみたいで工藤ちゃんは念入りにみていた。
 今日撮ったレントゲンの結果から、肺に水が溜まってるんじゃなくて、心臓の辺りに大きな腫瘍があって肺と食道が圧迫されてる事がわかった。水をとる手術もしないし、腫瘍も取らないときっぱりと言われた。今後は薬だけの治療を続けるという。このままいけば長くて3ヶ月の命と言われてから、それまできいた事もその後聞いた事もほとんど忘れてしまった。しかも、安楽死も考えておいた方がいいなんて言うから、泣きたくなった。その時、知らないおばちゃんが大きな犬を連れて入ってきた。工藤ちゃんのところは、病院と言っても、一部屋しかなくて待合室も手術室もなにもかも一緒で、お客さんがくれば、道路からドア一つで入ってきて、みんなごちゃ混ぜになっちゃう。無神経なそのおばちゃんは、ブーのキャリーバックの敷物を自分の犬がいじってるのに知らん顔で、一瞬にして悲しい気持ちが怒りに変わった。しかも、早くブーを家に連れて帰ろうと抱き上げたら、おばちゃんは「りっぱな猫ちゃんね〜」なんて騒ぐし、綱を緩めてる飼い犬はブーに駆け寄ってくるし、ブーが怖がり大声をあげてパニックになったのを見てやっと「外で待ってます」だって。どう考えても、猫は怖がりなんだからしっかり犬をつかんでろよ!と腹が立ってしょうがなかった。
 家に帰ってからブーは、床に倒れて寝てばかり。ごはんを食べないと弱ると思って、やわらかいエサにお湯をたしてスプーンであげると少し食べた。夕方になると、眠りながら、伸びをしたり、寝返りをうったりした。レム睡眠の痙攣まで起こしてるので、ちょっと気分もよくなってるのかもしれない。ホシがブーに寄り添ったり、お尻を枕代わりに貸したりしてたので、元気なうちにと思い2匹の様子をビデオや写真で撮影した。それにしても、ブーはまだ1歳、人間の年齢にしたら十代半ば、3日前まではいつものようによく遊んで甘える元気で賢くて自慢の猫だったのに、それがあと3ヶ月以内の命だなんて・・・何も悪いことしてないのにかわいそすぎる。ペットでもこんなに悲しい気分に
なるんだから、もしこれが人間の子供だったら親はどんなにつらいことか・・・。

 夜になってたまたま、ソファの下の物を取ろうとガサガサ音を立ていたら、ブーが起き上がってやってきて、ソファの下をまん丸な目で見つめていた。ソファの下からは、ブーがなくしたおもちゃのネズミがいくつも出てきた。ブーはネズミの臭いをちょっと嗅いであとはしらんぷり。数日前まで、大興奮で遊んでたのに。同じ猫とは思えないぐらいの変わりぶりに、あらためてショック。悲しい気持ちで、たくさん出てきたネズミをハチにぼこぼこ投げつけてやつ当たってみたけど気分は晴れず、マゾっ気のあるハチを喜ばせるだけだった。
 台所のマットやお風呂場の入り口がブーのお気に入りの場所になったらしい。寝転んでは、少し移動してまた寝転ぶの繰り返し。一度だけ、何か気に入らなさそうに「ムー」と鳴いた。
 夜になって、カーテンの陰にブーが隠れてたので、名前を呼ぶと二日ぶりにゴロゴロいった。気分がよくなってきたみたいで少し安心。今日もらってきた新しい薬が効いたのかも。

5月27日(火)くもり時々雨
 朝、8時半に工藤ちゃんから電話があって、啓太君が出た。レントゲンの結果は、肺が真っ白。薬をもらう事になった。ブーは、ふとんの上に寝転んだホシのそばに仲良く寝転んでいた。啓太くんが病院から薬をもらってきて、飲ませた。ブーは、相変わらず元気がでない。エサもほとんど食べないし、遊んだりもしないしぐったりとしている。こんな事は初めて。

 工藤ちゃんの話だと、肺は水がたまって3分の1しか機能してなくて、肺にたまった水を取るのは無麻酔だけど、水の色を見れば原因がわかるという。とりあえず、利尿剤を5日程飲ませて様子をみる事になった。でも、ぐったりしたらすぐ水を抜かなければならない。なんか大変なことが現実になりつつあって、緊張感がとれない。運動も禁止された。
 仕事の帰りにペットショップで鳥のささ身とやわらかいエサをブーの為に買い、100円ショップにも行って、ペット用の体温計を買った。体温計は、ペットショップで見たら2000円以上もしたので100円のでいいやとケチった。あとでみたら39度までのメモリしかついてない事に気が付いた。猫の平熱は39度まで。これじゃ熱があるかどうかわからなくてがっくり。
 家に帰る途中、工藤ちゃんの家の前を通ったら表に休診日のカードがかかってた。休診日だったのに、電話をくれて薬を出してくれたんだと知り、改めて工藤ちゃんに心の中で感謝。
 鳥のささみをブーにあげると、少し食べた。試しに「お手」と言うと、力のないお手をした。ブーの肛門から黄色い汁が出てきた。それは、前日に飲まされた油だった。毛玉は出てこなかった。薬は効いてるみたいで、2回おしっこをした。
 夜になってブーは更に元気がなくなって、机の下にもぐって寝てばかり。夜は、2階の窓辺にいたけど、心配で時々のぞいていたからあまり眠れなかった。5日も待てないから、明日病院に連れて行く事にした

5月26日(月)晴れ
 朝から、2階の部屋で仕事をしていたが、気分転換に1階におりるとハチが一匹で昼寝をしていた。ハチは、オスで2歳だけど体がとっても小さい。去年の秋、生後たった半年のブーとホシに成長を追い越されてしまって、今じゃハチだけ貧弱な体つき。そこでこっそりおやつを多めにあげて太らすキャンペーンを行っている・・・という訳で昨日買ったばかりのチキンのジャーキーをあげていると、ブーが気づいて二階からおりてきた。どんなに音をたてないようにそーっとしてても、おやつの音にだけは敏感なのが不思議。ドジでトンマなホシは一度眠ってしまうとなかなか起きられないので、時々おやつにありつけないでいる。むさぼり食うハチの隣でジャーキー欲しさにお手の芸をくりかえすブー。ついに根負けしてジャーキーをあげた。夕方までは、いつもと何も変わらない日だった・・・と言うよりブーの異変に全く気づかなかった。

 夕方啓太君が帰ってきた。ふとブーを見るとなんかいつにも増して息が荒く見えた。最近寝てる時でもお腹が上下に早く動いてるからなんでかなーと話してたんだけど、一度病院でみてもらおうという事になって啓太君が獣医さんに電話をした。その瞬間すごい地震で超びっくり。速報では宮城県沖で震度5弱と言ってたのでとりあえず病院に向かった。ブーはキャリーバックにおとなしく入ったけど、自転車にのせたとたん大きな声でニャーニャー鳴いた。普段ブーはかすれたぎみの声で鳴く。しかもニャーとは鳴かずに「ムカー」と変な声で鳴いている。だからはっきりニャーというのは珍しいというか、どっちが本当の声なんだろう。
 柴犬にちょっと似てる獣医、工藤先生と会うのはブーの去勢手術以来半年以上ぶり。何故かやつれてて、白髪も増えて犬顔から少し人間のおじさんに似てきていた。工藤ちゃんはブーを見るなり息は早いと言うので急に心配。熱もあって、さらに不安な気持ちになってきた。まあ、ブーの事だから食べ過ぎとか太りすぎとかそんなぐらいで終わるかもしれないと楽観的な気分でいたからもうドキドキ。毛玉の可能性もあるという事で油を飲まされて、レントゲンを撮ってもらった。結局、今夜は病院にお泊りの刑を宣告されてしまった。ブーピンチ!ブーはワンワンほえまくっている犬がいるすぐ上のケージに入れられた。その時、急にブーが去年の12月からやたら吐くようになった事を思いだして話したら、工藤ちゃんはもう1度診察したいと言ってブーをケージから出そうとした。ところがブーは背中の毛を恐竜みたいに逆立てうなり声まであげて猛烈に抵抗。工藤ちゃんはあきらめて「連れて帰ってください」と言った。思いがけず、入院しそうになったブーは、さらにまた思いがけず家に帰ることになった。工藤ちゃんは、明日の午前中電話でレントゲンの結果を教えてくれる事になった。
 家に帰ってからのブーは、まさに病人そのもの。青天の霹靂という感じ。さっきまで元気だったのに、病院に連れて行かれてショックだったのか、飲まされた油がまずかったのか、自分は病気なんだと自覚したのかわからないけど、床に寝転んだまんま。一度声をかけるとこっちを見上げて、返事をしたけど口だけあいて声はかすれてほとんど聞こえなかった。夜、背中をなでると少しゴロゴロ言った。よく見ると、肩甲骨が浮き上がってる。数日前からやたら目だってて何だろうと触ってみたりしてたけど、実は少しやせ始めていたらしい。それでも体重は5.5キロもあるから全く気が付かなかった。寝る前にホシとおもちゃで遊んでいると、ブーも2、3度おもちゃに手を伸ばしたので、少し安心して寝た。

5月25日(日)晴れ
天気がいいので、お出かけしてみる事にした。家を出るとき、ブーを抱っこして外で写真を撮ろうとしたら怒って顔を引っ掻かれた。顔を引っ掻かれるのはこれで2度目。恥ずかしいけど、もう慣れた。東急線にのって大きなペットショップに行った。なかなかの品揃えだった。ペット用品では、今後の創作活動の参考になりそうな品物もいくつかあった。ハチとホシとブーが好きなチキンのジャーキーと土佐の焼きかつおを買って帰った。啓太君は3匹分のかわいい迷子札と消臭剤を買った。家へ帰るといつものように3匹待っていた。その日撮った写真には怒ってたわりにはいい顔をしたブーが映ってたけど、まさか元気なブーの最後の日だったとは・・・。

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